「苦しみに証拠が必要な世の中だったらどうしよう…」勅使川原真衣が窮屈な現代社会に、警鐘を鳴らす
フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝の生ワイド「武田砂鉄ラジオマガジン」(文化放送)。4月15日(水)8時台のコーナー「ラジマガコラム」では、水曜前半レギュラーの組織開発コンサルタント・勅使川原真衣が、現代人が持つ苦しみや、いじめに関するデータを基にその対処法などを語った。
勅使川原真衣「今日は『苦しみに証拠が必要な世の中だったらどうしよう』という話を、ちょっと思考実験的に話してみたいと思っています。
きっかけは先週興味深い記事を拝読しました。日経新聞です。記事はこうありました。
『いじめを受けた人の心の不調、発症に関わる物質など解明/東京都医学総研』という記事が出てました。
いじめを受けたお子さんが、その後に抑うつなどの症状を抱える仕組みの一端が、東京都医学総合研究所などのチームによって示されたというニュースだったんですけども、
ちょっと詳しく言ったら複雑かもしれないので簡単にご紹介すると、思春期のお子さんを追跡して12歳・14歳・16歳時点でそれぞれの体内の物質を測定するということのようなんですけども、12歳時点のいじめの被害を確認した後に、14歳時点で尿中の『終末糖化産物』……『AGEs』というそうなんですけども、それの一種であるペントシジンという生成物を測るということみたいなんですよね。
そうすると16歳時点で抑うつ症状や精神病体験との関連が見られるということだそうです。いじめ被害があったお子さんのペントシジン濃度っていうのは高くて、その上昇っていうのが、抑うつ症状や精神病体験と関連しているよ、というニュースでした。
でも全てが説明されたってことはもちろんなくて、媒介分析によりますと、抑うつ症状のおよそ19%、精神病体験のおよそ28%に関わる可能性が示されたという話のようです」
武田砂鉄「うん」
勅使川原「これ、まず重要な知見なんだと思います。
『いじめは辛いよ』っていうのは私たちも分かってますし、深く長く影響を与えるんだということも、感覚的にというか感情的なものとしては理解をしているつもりなんですけども、これに生物学的なエビデンスと言われるものがついてきたということであれば、それは喜ぶべきことなのかなと思います。
何せ苦しみが本人の気のせいじゃないよと、言ってもらえることは大きいですよね。
甘えでも気持ちの問題でもないということは、
意義があるなと思います。
ただこれ思考実験として、ちょっと意地悪な問いを考えてみたんですけどね、『じゃあその物質が仮に出てないとした場合に、その人のいじめって立証されないの?』っていうようなことにならないといいなということを思っていたりもします」
武田「うーん」
勅使川原「もちろん研究者はそんなことをおっしゃってないですし、実際この研究は『個人診断のためのものではない』と明言されています。いじめ被害とその後の不調のメカニズムの一端を示したものだということは明確なんですけども、しかもですね、説明できる割合も5分の1程度とか3分の1程度ってことなので、ごく一部であると。
なんですけども、私たち往々にしてやりがちなことがあると思っていて、それは何か測定できたりとか検出されるとなると、なんか『そっちの方が本人が言ってることとか思ってることよりも、正しい客観的な指標なんじゃないか』みたいな、正しさの中心に置いてしまいがちっていうのはもしかするとあるのかなと思うんです」
武田「あと測定できたものと測定できなかったものがあった時に、測定できたものの方が強いとか、はっきりしてるとかっていうふうに思いがちですよね」
勅使川原「そうなんです。数値が出たとかね、その指標が見つかったとか、バイオマーカーが出たんじゃないかとかね、そういうのって砂鉄さんが今おっしゃった通り、その周辺にあるファクトが背後に追いやられて、数値化されたものだけが真実みたいになることって本当におなじみの光景かなと思うんです。
これ科学が悪いって話では、もちろんありません。
むしろ逆で、科学が見えなかったものを見えるようにしてくれてるっていう意義があるわけです。ですけども問題があるとしたら私たちのその後なんですよね。
つまり『見えるようになったものだけを信じて、見えないものを切り捨ててはいけないよね』っていうところ、これも一度意識する必要があるのかなと思っています」
この後、さらに勅使川原真衣さんによるこの問題の追跡、考察などのお話が続きます。
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