震災をきっかけに公共空間が育てる文化 ― ロバート キャンベルが見た宮城の今
フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝の生ワイド「武田砂鉄 ラジオマガジン」(文化放送)。7月16日(木)8時台のコーナー「ラジマガコラム」では、木曜前半レギュラーの日本文学者・ロバート キャンベルが、震災後に宮城県各所の公共施設で行われている様々な試みや、新しい文化を紹介した。
ロバート キャンベル「先週の木曜日から実は僕、今週はほとんど東京にいなくてですね、日本の各地方を歩き回っているわけですけど。
地方の中で、独自に、それぞれにこのアイデンティティみたいなものを、
ちょっとこう掬い取って育んでいって、意識するところと、
まだあんまり意識していないところもあるように見えるんですけど、
特に公共空間ですね。公園ですとか、道路空間、そこにやっぱり独自の、
人々が集まってその街ならでは、その地域ならではの文化っていうものを、
作ろうとしていることが、ちょっと最近の日本に吹いている風だなというふうに思います」
武田砂鉄「うん」
キャンベル「先週のこの番組が終わってすぐに向かったのが、
宮城県の鳴子(なるこ)温泉だったんですね。もう1000年を超える、
とても古い、由緒正しい温泉郷ですけれども。
『婦人之友』という雑誌がありまして、その取材に応じたわけですが、
東日本大震災のちょっと前から、実は江戸時代から続いている温泉旅館、
まあ『湯治場』ですね。昔は『旅館』という言葉を使わずに、
家財道具を持って行って1週間とか、例えば南三陸の網元の漁師たちが、
そこに1ヶ月とか1ヶ月半ぐらい滞在をして、体と心を癒して、
またこう海岸線に戻って仕事をするという『湯治』をする文化がそこにあるわけです。
東日本大震災の時に、私の友人……大沼君って言うんですけど、
『旅館大沼』という湯治場が鳴子温泉にあるわけですが、地震が来た時に、
私は実は東大の学生と一緒にそこにある山荘を貸し切って合宿をしようと計画をしていて、
地震が来たのでもちろんそれはできなかったわけですが、
安否確認のために電話をしたら、二次避難所になっていると。
高齢者の方とか、子供を抱えてる家庭が海岸線にある避難所には居づらいので、
1000人以上の人たちが、バスで温泉郷に運ばれました。
観光ホテルも小さな湯治場も、全部その人たちのお世話をすることになったんです。
それは仮設住宅ができるまで半年ぐらいの期間です」
武田「はい」
キャンベル「友人ということもあり、大沼君に『何かできることがあるか?』と聞いて、行けるようになって数週間後から『ブッククラブ』を立ち上げて、
『鳴子温泉ブッククラブ』というものを作ったんです。
当時は公共放送(NHK)しかなくて、行方不明者の方々の消息とか、
ずっと朝から見てると、心が本当に滅入ってしまう状況だったので、
月に何回か通って『読み切り講談』みたいに短編小説を持ち込んで、
50人とか60人で一緒に読んで、心をほぐしていただくというようなことをやっていたわけです。
それが仮設住宅ができて、一旦終了したわけですけど、なんか湯治場と読書というものがすごく相性がいいということがわかって、
若い宿の主人たちとか、飲食店の方々とか、そこにいる方々と定期的・不定期にいろんな人を連れて行って話をしたり、『読書風呂』みたいなイベントをやったりしてるわけですよ」
武田「なるほど」
キャンベル「今、その街の中でどういうふうになっているかといえば
やっぱり仙台からのお客さんが来ることが多いんですけども、
できるだけ長く滞在してもらって、豪華な食事とか観光名所が
すごくたくさんあるわけではないんですけども、大地の力を感じて
リフレッシュして帰っていただくためには、土を少し一緒にいじってもらって、
大豆を作ったりお米を作ったり、一緒に働くことを一つの資源としてやってて、
これがすごくうまくいってるんですね。
温泉郷全体がやってるわけではないんですけども、川が流れてて山があって、
その景色の中で自分が関わっていける、体感ができるような時間を作って、
できるだけこの街自体を元気づけようということがすごく進んでいる。
東日本大震災を一つのきっかけとして、自分たちの空間を広域的に見直しているわけですね」
武田「お客さんには、大体何日ぐらい滞在するぐらいのイメージでいらっしゃる方が多いんですか?」
キャンベル「3日間とか4日間ぐらい、この時間を削り取ることが
私たちにとって一番大きな課題だと思うんですけど。
行くとWi-Fiもありますし、『森の湯』と言って山の中腹に露天風呂があって
鳥のさえずりですとか、本当にシンプルなものを感じることで、
忘れるのではなく、人によって私もそうですけど、仕事をするわけですよ。
中日(なかび)、真ん中の1日を朝から3時間とか4時間ぐらい仕事に充てて
あとは散歩をしたり、一緒に何か野良仕事をしたり、面白い喫茶店があるので
そこでコーヒーなどを作ったり、こけし体験をしたり。
で、シンプルなものを食べて寝てまた早く起きるという、
それを自分のリズムの中に取り込むことで、すごくリフレッシュをする。
仕事で嫌なことはあるんだけど、生産性が上がるということを感じるわけです」
この後もロバート キャンベルさんは仙台市の各地で進行している様々なプロジェクトを取材したお話を語っていました。
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