92億ドルの先にあるもの——K-Beautyとクールジャパン機構
フリーライターの武田砂鉄が生放送でお送りする朝の生ワイド「武田砂鉄 ラジオマガジン」(文化放送)。9月2日(水)8時台のコーナー「ラジマガコラム」では、水曜前半レギュラーの組織開発コンサルタント・勅使川原真衣が、韓国の美容産業事情をきっかけに、日本政府の働き方改革に対して物申した。
勅使川原真衣「『K-Beauty』。今日は韓国の美容産業を入り口にお話をしてみたいと思います。砂鉄さん、『K-Beauty』って聞いたことはありますか?」
武田砂鉄「今初めて聞きました。K-POPみたいな感じのK-Beautyですね?」
勅使川原「おっしゃる通り、韓国美容ですね。シートマスクとか結構『韓国の物はいいな』なんて言って使ったりとか、すごいですよね。
あと、ちょっと前ですけど、『カタツムリ由来成分』って流行りませんでした?」
西村志野「あ、よく聞きましたねえ!」
武田「10年くらい前に韓国行った時にすごい売ってた気がします」
勅使川原「『本当かな?』と思いながらも、私も使いました。
あと今もね、『グラススキン』みたいな、ガラスのような肌とか『水光肌(すいこうはだ)』とか、色々流行ってるなとは思います。
ただ、この勢い、本当にもう単なる一過性の流行っていう言葉では、もはや片付けられないレベルと思います。
韓国の化粧品輸出額、2021年のデータですけれども、過去最高の92億ドル(約1兆円)ですね。で、これついに、フランス、アメリカに次ぐ世界第3位の化粧品輸出国となっています。また最大の輸出先も、長らく中国だったんですけれども、そこが変わってアメリカになったと。
そして輸出の中身が興味深くてですね、化粧品と言ってもメイクアップ用品ではないということなんですね。輸出額の75%がスキンケア製品だという点も、注目に値するかなと思います」
武田「結構なパーセンテージですね、75%ですからね」
勅使川原「そうなんですよね。なぜこれほど伸びたのか。その土台の一つとしては、やはり政府の動きっていうのがあったと見るべきだと思います。
90年代から韓国政府が進めてきたのは文化産業政策であると。で、97年アジア通貨危機がありましたよね。で、あの時に、『文化も国際競争力になるんじゃないか』という議論が韓国内で進んで、もう99年には『文化産業振興基本法』が制定されています。
そして2009年には、現在の韓国コンテンツ振興院(KOCCA)っていうのかな、KOCCAっていう組織が発足していて、資金面であるとか人材育成なんかもやります。それから海外市場への売り込み、現地拠点をどうするか、みたいな細々としたところの支援を行ってきているってことなんですね。
面白いなと思ったのが、こうやってまあコンテンツが海外で認知されると、ドラマとか映画とか、そこで映り込む洋服であるとか食べ物とか髪型、お肌、みたいなところにも人々の関心が向いていくっていう点なんですよね。
政府はそれも見越してですね、化粧品企業にも海外で『見本市どうしますか?』とか『販売拠点はどうするか』とか、各国の成分の規制みたいなのも違うので、そのあたりの対応とかも含めた研究開発などまで支援を行ってるってことなんです。
なので『韓流』というブームで関心を呼んで、それからデジタル化も手伝って商品を世界各地に届け、そして政府、行政が海外進出の障壁を細々とした部分で下げていく。これもBTSのようなK-POPであるとか韓国ドラマの成功っていうのが、もはや化粧品の巨大なショーウィンドウになったと言っても過言ではないと思います」
武田「なんか今、化粧品とかだけじゃなくてね、『BTSの誰々が読んだ本』、みたいなだけで、それでバーッと売れたりもしますからね。僕の本も読んでくんないかな、間違いで(笑)」
勅使川原「ねえ、期待しちゃいますよね。でもまあ、そういうありとあらゆるものがこう商機として広がっていくってことですよね。本当に、台風の目のようになっています。で、ここから何を申し上げたいかと言いますと、あの、対比させたいものが私の中ではあります。それズバリ、日本のクールジャパン機構なんですね」
武田「うん」
勅使川原「これ、先週水曜日、朝刊ピックアップでお伝えしたと思うんですけども、2024年3月期には累積損失が356億円ということで。はい、『もうこれやめて新組織立ち上げよう』っていう議論が進んでるよというニュースでした。
で、韓国の成功をこれだけ目の当たりにすると、やっぱり日本もね、韓国のような組織を作ればいいんじゃないかっていうのは当然起き上がる議論なんですよね。
実際、先週紹介した新聞記事でも『手本は韓国』っていう風に書いてありましたよね。そうなんですが、まあお気づきの通り、看板だけすげ替えても仕方がないのかなという気もします。その時のコメントでも申し上げましたけども、ヒットをね、政府とか行政が当てに行くってことは無理なんじゃないのかなと思うんですよ。
ヒットがまあ芽が出たとしたら、それを外に出していける土台を仕組みとしていかに作るかってことが政府、行政に求められることだと思います。で、まさに韓国がやったのはその点だと思えるわけです。
なので日本の議論を見てると、『誰をトップにしようか』とか『所管官庁どうするか』とかいう話が今巻き起こってますけども、いやヒットを見抜けるような大物をどこで捕まえてくるかとか、そういう話じゃないはずなんですよね。
必要なのは目利きをどうするかってことじゃなくて、私はむしろ、その挑戦する組織の邪魔をしないこと。これぐらいの粒度で、必要なことじゃないのかなと思ったりもしています」
勅使川原真衣さんのお話は、このあともまだまだ続きます。韓国型の商法、成功の一方で感じる一抹の不安、また、肌の良し悪しから日本政府が提唱する働き方の問題まで、厳しく指摘しています。気になる方は、radikoのタイムフリーでご確認ください。
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