「安倍晋三 回顧展」で見ることができる「人間・安倍晋三」が遺したもの

「安倍晋三 回顧展」で見ることができる「人間・安倍晋三」が遺したもの

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ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日15時~17時、火~金曜日15時~17時35分)、7月9日の放送にノンフィクション作家の常井健一が出演した。東京で開催されている「安倍晋三 回顧展」について、現地の様子、その感想などを語った。

長野智子「(『安倍晋三 回顧展』を)どんな思いで取材されましたか?」

常井健一「今回は安倍礼賛や、逆に『けしからん』といった話をするわけではありません。史上最長の政権になった元総理大臣ですから、こういう展示会が生まれることはごく自然なことだと思います。政治家の歴史を扱う物書きからすれば、展示されているもののクオリティは非常に高いと思いました」

長野「ほう。そうですか」

常井「私のように安倍政権と距離のある人間でも比較的、入りやすかった。政治家・安倍晋三というよりも人間・安倍晋三というテーマに絞ったイベントだからなんですね。実際、入口にあった説明文には『人間・安倍晋三を感じ、私たちの未来を考える』と書かれていた。公式サイトには『特定の政治的主張や結論を強調するものではない』と。ここから本題です。私は政治性を否定することが、かえって高い政治性を物語っているな、と」

長野「ああ」

常井「会場を歩きながら思い出したのが、『博覧会の政治学:まなざしの近代』という名著のこと。その中で社会学者の吉見俊哉さんが、博覧会という空間は、ただの物を並べた場所ではなくて時代の欲望や権力者の思惑を可視化するプロパガンダ装置である、と論じているんです。この回顧展も、安倍晋三をどう見るべきか。そこには主催者の意図があって、来場者のまなざしを1つの方向に誘う空間である、ということは確かです」

長野「へえ~!」

常井「展示の中心は遺品なんです。遺品は個人に対する批判や異論を沈黙させる強い力を持っています。お葬式もそうだと思いますが、来場者は受付で参列者となった瞬間、それまでのことは水に流して、個人の悪口は控えます。参列者は全員、おのずと共感の回路へと導かれる。この空間は非政治的ではないな、と思ったんですね」

長野「具体的にはどのような展示だったんですか?」

常井「1つは、そこが追悼の場として位置づけられていた、ということ。会場に入ると、まず晩年と幼少期の大きな写真が並んでいる。安倍さんのふるさと、山口県長門市の田園風景の映像が流れるスペースへ進む。10分ほどの映像で、政治家は出てきません。最初と最後に昭恵夫人が出てきて、涙声のような声色で夫を語っています。そこでやはり、ハッとさせられる。昭恵夫人も被害者なんだ、と」

長野「うん」

常井「次の部屋へ移ると偉大な祖父と父といったファミリーの存在、政治家として日の当たる道をずっと歩んできた29年間、そして亡くなる直前までの使っていた品々が、1つの流れの中に配置されている。政策的な資料というより、遺品です。アベノミクスや安保法制、モリ・カケ・サクラ、旧統一教会。安倍政権でたくさん問題あったと思いますが、そういう政治的なイシューは扱われていません」

長野「はい」

常井「浮かび上がるのは人間・安倍晋三であって。あくまで追悼の対象にしてください、ということ。人生に特化したナラティブが政治的争点を薄めている。それが今回の特徴です」

長野「昭恵さんが関わる民間組織が開催しているから、そうなってくる?」

常井「そうですねえ。安倍さんは国論を二分させてきた。光もあれば影もある。存在感が大きい分だけ、影も大きいと。ただ会場で構成されているのは、努力家、挑戦者、そして犠牲者としての安倍さん、ということです」

「長野智子アップデート」は毎週月曜午後3時~5時、火曜~金曜午後3時~5時35分、文化放送(FM91.6MHz、AM1134kHz、radiko)で放送中。radikoのタイムフリー機能では、1週間後まで聴取できます。

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