スイスで人口制限の法案が否決。「政治家に任せっぱなしにしない」国民投票の制度
ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日15時~17時、火~金曜日15時~17時35分)、6月18日の放送に元・日刊スポーツ編集局長でジャーナリストの久保勇人が出演。「政治家に任せっぱなしにしない、スイスの国民投票」をテーマに、国民投票を重んじるスイスの制度について解説した。
鈴木敏夫(文化放送解説委員)「今月14日、スイスで人口の上限を1000万人とする憲法の改正案に対し、国民投票が行われました。最大の政党による発議でしたが、否決されました」
長野智子「ニュースで『えっ?』と思いました。どんな国民投票だったんですか?」
久保勇人「連邦議会の下院、全部で200議席ぐらいあります。うち62議席を占めている最大政党、右派の国民党が2050年までスイスの人口が1000万人を超えてはならない、と憲法で規定しましょう、と。いまスイスの人口は900万人を少し超えたぐらいですが、かなり増加しているんです。外国人がほとんどですが、居住申請を厳格化して。1000万人を超えた場合は人の自由な移動を認めるEUの協定も破棄しましょう、と踏み込んだものです」
長野「はい」
久保「国民党はスイスの制度に従って有権者の署名、10万人以上を集めて国民投票にかけました。投票率は事前の郵便投票も含めてだいたい60%ぐらいでした。賛成、つまり憲法に盛り込みましょう、というのが45%。反対が55%だった、ということです」
長野「そんなに離れてはいませんね」
久保「でも多数のほうが採用されるということで、否決されたと。憲法改正発議の背景には、スイスで少子高齢化がすごく問題になっていることがあった。それに伴って移民が急増しているんですね。スイスって給与水準も物価も高い国なんです。その給与水準を求めて移民が入ってきていて。いまのペースだと40年代の初めに1000万人に達してしまう、と」
長野「うん」
久保「一方で元々いるスイス国民は出生率が1.29で、少子高齢化です。人口が増えているということはやはり、少子高齢化で不足している国の労働力を、EU圏から入ってくる移民の力で支えている、という構造です。ところがそういう社会構造の中で家賃が高騰したり、住宅が不足したり、交通渋滞が起きたり、治安が悪化したり。そういう問題が顕在化してきた。それで今回、議会で最も有力な政党が、こういう処置はどうか、と提案した」
長野「日本にとっても他人ごとではない」
久保「少子高齢化による、自国以外の労働力に頼る構図は日本もそうだし、世界の先進国も同じような問題を抱えている、と。そういう意味で今回の件は世界的にも注目されました。この国民党の提案に対し、政府や経済界は、人口を制限することは労働力不足を招く、と。EUとの関係悪化も自国にとっても悪いことだ、ということで反対を表明していた。最大の政党と、政府などが国論を二分していた、というわけです」
長野「なるほど」
久保「国論を二分する。どこかの国もいま、そのような問題がたくさん起きている。そういう中でスイスの国民が直接、政治に絡んでいる、という時勢に注目したいな、と」
長野「きのう日本でも国民投票法の改正案が衆院憲法審査会で可決されています」
久保「この国会中に改憲に向けて、国民投票法の改正案を成立させよう、ということで与党は動いていますよね。スイスはすべての重要な決定を国民投票にかけるという、直接民主制度を、自分たちが選んだ代表者を通じて政治に関わっていく、という間接民主主義と併用しているんです」
番組ではスイスにおける国の決定と国民の関わりについて、久保がさらに解説した。詳しくはradikoのタイムフリー機能で確認してほしい。
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