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10月30日 仲代達矢さんの名言

赤秋[せきしゅう]とは
 
本当は(人が生きている年代を春夏秋冬にたとえた言い方で)
白秋[はくしゅう]”っていうんですよね。
 
秋は冬に近いですが、
紅葉の時期で真っ赤に燃えあがっていますよね。
 
“青春”が過ぎて…
“厳冬”というのが一番最後なんですが、
冬は“人間の死”ということになるわけで、
その前に、真っ赤に咲いて生きようと、
勝手に名付けたわけなんです。
 
石川 「仲代さんの生きる道そのままの、ふさわしい言葉ですね」



芝居のセリフを覚えるための日課について

  セリフを覚えて“運ぶ”(芝居を進行する)だけなら比較的簡単です。
  ただ(舞台『炎の人』で)仲代“フィンセント”ゴッホは、
  仲代達矢の体を通過していくには、動き・セリフを身につけないといけない。
  しょっちゅう復習していかないと身につかないんで…。
  セリフさえなければ、いい商売ですよ。
 
    部屋中 天井まで、筆で書いて(貼っている)。
    自分で筆で書いていると、錯覚でしょうけど
    “体に入ってくる“感じがするんです。
 

 
  昔『ハムレット』をやったとき、うちにいた人が観客席で
  「あ!トイレのセリフだ!」ってつぶやいたそうです。
 
    『炎の人』はフランスに集まっている画家の名前が
    40人くらい出てくるんです。
    外国人の人の名前でしょ。それを全部覚えるわけですから・・・。
 
弘兼 「昔、テレビはドラマも生放送でしたよね。
     ああいう時って、どうやって覚えたんでしょうね?」

 
  テレビは“一日”で“生”ですから・・・
  (たとえば)テーブルがありますと「ここからここまでは俺のセリフだぞ」って
  カンニング(ペーパー)を入れるわけです。
  「この(振り向いた先の)柱にも『これ、俺のセリフだよ』」(というように貼ってある)――。
 
  
 
  それで・・・バラしちゃおうかな。
  伴 淳三郎さんが、
  水炊きのシーンがありまして、白菜に書いてたんですね。
  芝居が進行して、水炊きですから
  白菜を入れたら、鉛筆で書いたセリフが消えてなくなった・・・。
  それでも生(放送)ですから、なんとかセリフをつなげなきゃいけないんですね。
 
    一番傑作なのは、大先輩に金子信雄さんがいらして、
    突如としてセリフがわからなくなる・・・
    われわれの世界では“真っ白になる”っていうんですが、
    共演者が「あれ?」「何 始めたの?」(と思ったら)
    口だけ動かしたんですよ。
 
    その頃、テレビの台数が少ないのかもしれないけど
    (視聴者に)「うちのテレビ、故障だ」って思わせた――。
    それほど、危機一髪、スリルの中、
    スレスレのところで やってたんです。



自身の代表作について
 
チャップリンだったら“次回作”って言うんでしょうけど…、
役者って不思議なもんで、
自分では“絶対うまくいった”“ホームランを打った”と思うものが、
意外と評判が悪かったり、
“デッドボールで出塁した”のが評判良かったり、
複雑なものがあるんですけど、
自分は20代で大体終わったな、っていう気がするんですよ。
 


  じゃあ「今は何をやってるんだ」っていうことになりますけれども・・・、
  たとえば、今やっている
  ゴッホ(『炎の人』)を代表作にしたいな、と思ってますけど、
  後ろを振り返ってみますと、20代があまりにも
  人との出会い、作品との出会いがよかったものですから、
  それを考えますと、
  監督も、カメラマンも、照明も、シナリオも、役者も、
  全部揃ったのは『切腹』(1962年)という作品だと思ってます。
 
だから代表作は29歳ですから、そこで終わってしまったんじゃないかと思ってます。
 
弘兼 「あれはワクワクしましたね。
     若い人に時代劇を観るなら絶対『切腹』を観ろ、って言ってるんです」



仲代達矢さんの好きな言葉
 
    『人には優しく 自分にも優しく ニンマリと生きる』
 

 
もともとは、
人間を演じるんだし、人との関係――人との思いやりを含めて、
“人には優しく、自分には厳しく”というのが本来の生き方だった・・・
ただ最近、年とったせいでしょうか、
人には優しく、自分にも優しくていいんじゃないか――と。
これだけ頑張ってきたんだから。
 
  “ニンマリ”というのは、
  “ニッコリ”ではないんです。
  「腹が立ってもニンマリ受けよう」――と(笑)
  そういう老人の考え方だと思いますけどね。
  “ニンマリ”していれば戦争なんか起きないんだろうな、という感じもあるんですが。
 
いやなことがあってもニンマリ。
 
人は「“ニッコリ”にしてくれませんか」と言うんですけど、
「いや“ニッコリ”にはしない――“ニンマリ”です」と。
 

 
  弘兼 「サインを書かれる時、フェルトペンをギュッと押さえるように書かれましたね」
 
  筆圧強いんですよ。
 
  石川 「毛筆のように操っていますね」
 
  本当は毛筆のほうが好きなんですよね。


団塊ホームルーム ~ ゲスト・クエスチョン
 
  ~ 仲代達矢さんへの10 Questions ~
 
Q.昨夜の睡眠時間は?
A.5時間
  
Q.今朝の朝食のメニューは?
A.バナナ、シリアル、牛乳
 
Q.注目しているニュースは?
A.民主党、しっかり!
 
Q.今、気になる人は誰?
A.フィンセント・ファン・ゴッホ
  
Q.一番 落ち着く場所は?
A.自分の部屋
 
Q.毎日必ずする日課は?
A.『炎の人』のセリフを 始めから終りまで言う
  
Q.最近、感動したことは?
A.ジャイアンツにいい選手が入ったと喜んでいます
 
Q.好きな香り・匂いは?
A.無臭
 
Q.チャームポイントは?
A.自分ではわかりません
 
弘兼 「絶対に“目力”ですよね」
 
  黒澤(明)さんに「君の一番いいところは目だよ」
  「どんなところにライトを置いても君は目に光が入るんだよ。
   非常に撮りやすい、それが一番いいんだ」
って言われてガックリしました(笑)
 
Q.無人島に“一つ”持っていくなら何?
A.テントかな
 



仲代達矢さんが初めて買ったレコード
 
 『ハーバー・ライト』
 
  戦争が終わったばかりで、アメリカのポピュラーが入って来て、
  どなたが歌ったか覚えていないですが
  『ハーバー・ライト』を初めて買いました。
 
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2010年10月30日