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9月24日 古今亭志ん朝 特集! ゲスト:古今亭志ん輔さん

テーマ 没後10年!志ん朝師匠への熱い想い
 
昭和が生んだ不世出の名人 古今亭志ん朝さんが
この世を去ってから間もなく10年(命日は2001年10月1日)。
 
この日は、古今亭志ん輔師匠をゲストに迎え、
2時間の“古今亭志ん朝 特集”
 
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古今亭志ん朝さん――その全身を包むオーラに、
志ん輔さんは一瞬にして志ん朝師匠への弟子入りを決意――。
 
放送では“食わず嫌い”で落語好きではなかった高校時代の志ん輔師匠が
志ん朝師匠の元へ通いつめることで弟子入りを果たすまで、
新弟子時代の苦労、『志ん輔』を名乗る経緯…、
30年の師弟の歩みを時間の限りお話しいただきました。
 
そして、志ん朝師匠没後10年を前に
志ん輔師匠は これまで話したことことのない、
師弟が最後に交わした言葉のやり取りを 初めて打ち明けてくださいました。
 



師から弟子へ――『から抜け』伝授の裏側
 
ある日、志ん輔さんが、志ん朝師匠に
古典落語『から抜け』の稽古をつけてもらうよう志願。
志ん朝師匠は これを承諾しますが
稽古が始まったのは、それから一週間が過ぎた後でした。
 
稽古をつけて欲しい――という弟子の願いを聞き入れた志ん朝師匠は、
自らが橘家文蔵師匠から『から抜け』の指南を受けてから、
志ん輔さんに伝授。
 
志ん輔さんは 後日
橘家文蔵師匠から、当時の裏話を耳にします。
 
「お前のところの師匠はいい師匠だよ。
 志ん朝さんは
 『倣ったけど忘れちゃったから、教えてくれないか。
  弟子に稽古をつけたいんだ』
って、俺のところに来たんだよ。
 
(志ん朝)師匠が明治座の楽屋に来て、
 “から抜け”を習って、
 それでお前に稽古したんだぞ」
(文蔵師匠)
 
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志ん輔 「たかが小噺三つですよ。
      いい加減に誤魔化してやればいいんですよ。
      責任を持って“後輩につないでいけよ”って想いをこめて
      稽古してくださったんだ、と思った時、グッときました」

 


志ん朝師匠没後10年を前に・・・今、初めて語られる師弟の絆
 
肝臓がんを患い、やがて肺に転移――。
2001年10月1日、この世を去った志ん朝師匠。
 
志ん輔師匠に当時のお話を伺っていると・・・
 
「今まで、言えなかったんですけど・・・」とポツリ。
 
志ん朝さんは、がんが肺に転移したことで、
体の右側を下にする体勢で横になる必要があり、 
寝返りを打たないように おかみさん、お弟子さん達が交代で
横になっている師匠の体を支えていましたが・・・
 
志ん輔 「私、支えてても寝ちゃうんで、
      抱きついちゃったんです、後ろから背中に。
      抱きながら・・・なんであんなこと言ったんだろうな。
      今まで、あれだったんですけどね、言えなかったんですけど…。
      師匠はモルヒネ(の服用)で うつろになっていて、
      聞えてはいると思うんですけど
      『師匠は、ずっと一番だった。
      マラソンでもなんでも2番の人が3番になったり、
      3番の人が4番に落ちたってあんまり目立たないけど、
      1番の人が2番に落ちたら目立つ』

      トップじゃなくなった――ということで。
      『師匠はずっと頑張って、1番でやってきたんだから…そうですよね?』
      “うん”って返事をしたような気がしたんですよ。
      『だから、もう いいんじゃないですか』って言っちゃったんですよ」

 
弘兼 「もう頑張ることもしないで――と」
 
志ん輔 「その、明くる朝 亡くなったんです。
      ひょっとしたら、あんなこと言わなければ、
      もっと数日もったのかもしれないな――と思うと自分で自分が…。
      10年くらいたって、自分の気持ちが落ち着いてきたんですかね。
      楽屋でも あんまり話せなかったんですよ」

 
弘兼 「おかみさんもご存じなかった?」
 
志ん輔 「ここで初めて…
      でも、ここ(胸)に詰まってたものは取れたんですけど、
      “気持ちを理解してましたよ”って人間が一人はいたということを
      師匠に告げたかっただけの話なんですけどね」

 
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弘兼 「“天才”“100年にひとり”といろいろなことを言われて
     テレビに出て、お芝居もやって、超有名人になって
     落語界であんなに“落語以外”のこと、いろんなことをやった人って
     いなかったですよね」

 
志ん輔 「全部 一流になっていくことは(ほかに)ないですよね」
 
弘兼 「何の世界に行ったって、成功された方だったんでしょうね」
 


志ん朝十三夜
 
放送では、10月1日に発売されるCD9枚組
文化放送開局60周年記念【志ん朝十三夜】
 ~文化放送アーカイブス『蔵出し落語特選』~
の中から
『幾代餅』
佳境の部分から下げまでをお聴きいただきました。
 
弘兼 「素晴らしいですね!
     江戸っ子の言葉の使い方――が見事ですね」

 
志ん輔 「体が躍動しながら演じるんですよ。
      そんなに動いてるのかな?と思っても、ホントはそんなに動いてない。
      それでも“スイング”してるんですよ。
      その中でポンポンポンポン……と話を弾ませながら転がして、
      お客さんにポーンとぶつけたり、こっちに引っぱったり…」

 
弘兼 「ホロリとさせて笑わせて・・・
     ホロリとさせて笑わせる――絶妙のタイミングですね」

   
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全25演目を収録したCD9枚組について詳しくはこちらをご覧ください。
 


 古今亭志ん輔さんの最新情報は
  古今亭志ん輔 オフィシャルサイトでご確認ください。
 


お送りした曲目
 
越後獅子の唄 / 美空ひばり
  (弘兼セレクション)
What Kind Of Fool Am I おろかな心 / サミー・デイビス・ジュニア
  (弘兼セレクション)
歩いて帰ろう / 斉藤和義
 
シング シング シング / ベニー・グッドマン楽団
 
リラックス / Frankie Goes To Hollywood
  


古今亭志ん輔さんの名言・好きな言葉はこちらをご覧ください。
 
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2011年09月24日