634

6月26日 犬塚 弘さんの名言

最近のお笑いの芸風をどのようにご覧になっていますか?
 
(自分が)年をとった、時代が違うのかな、と思うんです。
 
でも、ある番組で、若者と話をする機会があって、
クレイジーのギャグの話をしたり、
動いて見せたりしたことがあるんです。そうしたら
 
  「どうして、今の人達はそういうことをやってくれないんですか?」
  「人をけなしたり、バカにするお笑いはイヤです」

 
・・・って、20代の人が言うんです。
そういう若者もいるんだな、って初めてわかって、
今、僕が感じているのは・・・
 
  今は“テンポ”が速くなってます。
  でも、テンポがある中にも“間“があってもいいと思うんですよ。
 

 
ポンポンポンポンしゃべってても、
途中で、一拍でも二拍でも“間”をあけて、
話の続きをだしたら、そこにお笑いに“溜まり”ができて、
次のセリフで笑えるんじゃないかと思うんです。
 
  (それなのに)途中、笑いが入る所じゃないところで、
  (編集で)“笑い声”を入れるから・・・
  違うんじゃないかな、と思うんです。
 
植木がとんでもないところに出てきて、周りの人が睨んでる・・・
それを見て
『あれ?・・・あぁ、お呼びじゃない』と独り言を言って、
で、横の人を見て『お呼びでないよね?』と言っても、睨まれてる…。
 
弘兼 「その頃、半笑いになってるんですよ、
     その“間”ですよね」

 
その“間”を見てる方、聴いてる方に与えてあげることが
必要だと思うんです。
 
どうして、僕たちは できたかというと、
落語をよく見に行ったんですよ。
そうすると“間”が面白いんです。
 
弘兼 「たしかに落語の名人は“間”がうまいですね」
 

 
クレイジーキャッツのムードメーカーは誰ですか?
  
コソっとおかしいことをして笑わせるのは 谷 啓です。
 
ハナが亡くなって、ハナのうちにタレントが集まって、
最後に、クレイジーのみんなが残って、
応接間で植木と話をしてたんです。
 
  そこに谷 啓が来たんで、
  「帰るの?」と聞いたら
  黙って、二人の前に立ったまま、右足を上げて、
  靴下を脱ぎだしたんです。
  裸足になった足を僕たちに向けると・・・
 
  『お先に失礼』って書いてあるんです。
 
「また やられた!」って・・・(笑)
 
奥さんに聞いたら
「出かける時に、自分の部屋で足の裏に何か書いてたわよ」って
こういうわけなんです。
 
弘兼 「仕込んでたんだ(笑)」
 
こういうのが いくつもあって何十年たっても、みんなが集まると
「谷啓はこうだった」「植木はこうだった」って言って笑ってるんです。

メンバーの中で最も気が合った人は?
 
谷 啓植木ですね。
 
僕は芝居の世界に入りましたけど、
東京でやると、植木は必ず観てくれて、終わると必ず
「あの場面は、こうした方がいいんじゃないか」
と言ってくれるんです。うれしいですね。
 
始まる前、楽屋に入ってきて、
「ご苦労さん、ご苦労さん」って(劇団員の)肩を叩いていくんです。
 
弘兼 「映画そのまんまですね(笑)」
 
終わったら、また入ってきて、
みんなが「お先に失礼します」って帰って、誰もいなくなった頃
 
「ワンちゃん(=犬塚さん)が主役なんだから
 (終演後)最後、なんで、普通に頭を下げるんだ!
 翻訳モノ
(外国の芝居)なんだから
 両手広げて、右足を下げて『ありがとうございました』って気持ちで
 お辞儀するんだよ。
 ワンちゃん、そういうところが地味なんだよ!
 日本の芝居じゃないんだよ!」

 
・・・そこまで言ってくれるんですよ。うれしいでしょ?
 

 
犬塚 弘さんの好きな言葉
 
    『飄飄として訥訥と』
 

 
(自分の)性格もあるし、
人生ってこうじゃないかな・・・僕の生き方がこうなんです。
 
  風に逆らわずフラフラっと、
  あとは、ボツボツと、自分のやりたいことをコツコツやって…
  力まないでやっていこうな、と思って・・・
  そういう人生だったんです。
 
弘兼 「これからも、こういう雰囲気で…」
 
  もう81ですから、それこそ“飄飄”です(笑)
 

2010年06月26日