614

2月25日 ゲスト:篠山紀信さん

テーマ
 
写真は時代を映す鏡 篠山紀信

 
ゲストは写真家・篠山紀信さん。
 
span
▲画像をクリックすると拡大します



『ATOKATA』
 
最新写真集『ATOKATA』は、
「写真家は時代の写し鏡」という篠山紀信さんが
独自の視点で東日本大震災の被災地を切り撮った写真集。
 
「その時代の人・もの、
その時代に起こったことを写すのが写真家」

と語る篠山紀信さんですが、
去年3月11日の大震災は
写真家として「どう受け止めて、どう表現しようか」と感じたそうです。
 
震災発生から約50日後、篠山さんが初めて
被災地=仙台・荒浜地区を訪れ、
目の当たりにした光景――
依然として水が引いておらず
静かに漂う水と 横たわる木・・・
 
篠山 「すごい美しいんです。
     よく見ると、木の肌が剥けていたり、
     水の中に瓦礫があったりするんですけど、
     この静かな水がこんな恐ろしいことをしたのか
     ――というような思いがして・・・」

 
span
 
『ATOKATA』を見終わった方は決まって
“風景がきれいですね。
 でも、こんなことを言うのは不謹慎ですね”

という感想を口にするそうです。
 
篠山 「それはその通りで、
     水の中にも、がれきの中にも
     亡くなった方がおられるかもしれないし、
     ただ“美しい”っていうことではないんですけど
     自然が、自らの自然をすごいエネルギーで壊して
     また新しい自然を作ったんだ――
     っていう風に見えたんですよ。
     そうすると畏怖と畏敬の念を持って
     自然に対峙することができるようになったんです。
     そうすると写る写真が全然違ってくるんですよ」

 
    「一瞬にして自然が全てを壊した――
     そのエネルギーの怖さがあると同時に
     その自然が“新しい自然”を作った――
     というところで見た結果がこの写真集です」

 
span
 
『ATOKATA』の表紙に写る場所(=埋立地)に
暮らしていた方が写真集を見て連絡をされたそうです。
 
『この写真は私の家の前の風景です』
 
その方は
“人間が自然をコントロールできると思っていたら
 ただ一回の津波によって元通りになった。
 自然の力はすごい――ということを目の当たりにして
 それを生涯忘れないために、写真を送ってくれないか”

と、望まれました。
 
篠山 「被害に遭われた方が
     むしろ人間の方が自然をないがしろにして
     自然の力はすごいんだ――ということを
     忘れないために『この写真が欲しい』って
     言ってくれたのは、やっぱり
     この写真を撮ってよかったと思うんですよね」

 
弘兼 「『ATOKATA』というタイトルも
     “跡形もなくなった現実を見ましょう”
     という意味でつけられたんですね?」

 
篠山 「そうです」
 
■写真集『ATOKATA』
 
 日経BP社から発売中(5,800円+税)
 


あの人の撮影エピソード
 
■山口百恵さん
 
篠山紀信さんが山口百恵さんに初めて会ったのは
百恵さんが14歳の時。
 
以来、レコードジャケットの撮影をご担当。
数多くの作品を残してこられ
去年には篠山さん初のエッセイ集
『元気な時代、それは山口百恵です』(講談社)も発表。
 
篠山 「普通の子で、ちょっと陰りがあって
     “ピカピカ”という感じじゃないんです。
     それがすごく色っぽいんですよね。
     不思議な子だなと思ってました」

 
弘兼 「『ひと夏の経験』を歌ってる時は
     顔は子供、歌の内容は色っぽい感じで
     最終的に
     姿全体で色気が漂ってる感じになりましたよね」

  
篠山 「彼女自身の才能ですね、あれは」
 
撮影の度に、紀信さんの前には
“前よりちょっと違う大人の百恵さん”が現れ
新たな一面が引き出される――
この繰り返しで引退まで仕事をご一緒されたそうです。
 
篠山 「『70年代といえば山口百恵』
     時代の顔になった人を撮れたのは
     写真家として幸せなことでしたね」

 
span
 
■宮沢りえさん
 
1991年、宮沢りえさんが18歳の時に発売された
ヘアヌード写真集『サンタフェ』
当時大きな話題になりました。
 
篠山 「りえママに、本当に冗談で
     『18になったんだから裸でも撮らなきゃ』
     と言ったら
     『撮るんなら連休の後かな…』
     そういうことから始まったんですね」

 
アメリカ・サンタフェは
ジョージア・オキーフ、アルフレッド・スティーグリッツら
著名な画家・写真家が作品を作った場所。
 
篠山 「一種の“写真の聖地”なわけです。
     聖女のように美しいりえちゃんを撮るなら
     聖地しかないだろう、と
     サンタフェを選んだんです」

 
また、撮影当初、宮沢りえさんのお母さんに
「こんなの撮りにきたわけじゃないわよ」
怒られた(!)エピソードもご紹介いただきました。
 
篠山 「寒くて鳥肌がたっちゃうから
     ガウンを着ていて、撮るときだけ
     パッとはずして、またパッとかける」

 
span
 
■吉永小百合さん
 
吉永小百合さんの映画出演100本記念作品
「鶴の恩返し」を題材にした
『つる-鶴-』(1988年・市川崑監督)のポスター撮影が
が姿を見せる北海道・釧路で行われました。
 
篠山 「自然の鶴ですから、本当は望遠レンズで
     遠くから撮らないと逃げちゃう」

 
ところが、雪の舞う中、
白い着物を着た吉永小百合さんが近づいても
鶴は逃げることなく・・・
 
篠山 「鶴と同化しちゃう。
     あれは いい写真が撮れましたよ。
     あんなにいいと“合成したのか”と
     言われますけど、
     吉永さんの気持ちが通じたんでしょうね」

 
弘兼 「鶴もわかるんですかね、
     危害を加えない人を」

 
石川 「もしかしたら鶴の方に
     何か恩義があったのかもしれないですね」

 
span span


“写真の神様”が降りてきた! 50年の写真家生活の集大成!
 
■『篠山紀信 写真力 THE PEOPLE by KISHIN展』
 
6月30日~9月17日
 熊本市現代美術館
10月3日~12月24日
 東京オペラシティアートギャラリー
 
2013年12月~2014年3月
 新潟県立万代島美術館
 
「『これだ!』という写真が撮れるときは
 写真の神様が降りて来た時だと思うんです」

 
 ◆写真の神様が降りてくる時の三要素◆
 
 撮る相手にリスペクトする気持ちを持つ
 その場の空気を読み、リラックスさせる
 自分の感受性・エネルギーを最大限ヒートアップさせる
 
篠山 「そういうことが起こると、
     たま~に写真の神様が降りてくる。
     それは信じられないほど
     いい写真なわけですよ。
     50年にわたってやった中で
     『この写真は降りてきたよな』
     という写真だけを集めて
     展覧会をやろうと思ってるんですよ」

 
span
▲ご自身が写真を撮られるのは「嫌い」とおっしゃる篠山さんでしたが
  生放送中にカメラに目線を送ってくださってパチリ

 
 そのほか篠山紀信さんの最新情報は
 篠山紀信公式サイト|SHINOYAMAKISHIN.JPでご確認ください。


お送りした曲目
 
色づく街 / 南沙織
 (弘兼セレクション)
スターティング・オーヴァー / ジョン・レノン
 (弘兼セレクション)
ブルー・ライト・ヨコハマ / いしだあゆみ
 (RN・孝夫さんが初めて買ったレコード)
横須賀ストーリー / 山口百恵
 (篠山紀信さんの思い出の1曲) 
翼をください / 赤い鳥
 


span
 
篠山紀信さんの名言・好きな言葉(PC版)はこちらをご覧ください。
 
過去の放送レポート バックナンバー(PC版)はこちら

2012年02月25日