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4月21日 ゲスト:島田雅彦さん

テーマ
  『 芥川賞のウラ側、教えます!
 
             島田雅彦  

 
ゲストは小説家で、芥川賞選考委員でもある
島田雅彦さん。
 
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▲石川アナウンサーが手にしているのは島田雅彦さん著『悪貨』
  (画像をクリックすると拡大します)

 
ご自身が来月
新刊の発売を控える小説家であると同時に
芥川賞 選考委員でもある島田雅彦さんに、
芥川賞の選考方法とそのウラ側、
島田さんの小説の書き方などを伺いました。
 
「団塊スマートライフ」のコーナーでも
50歳以上の方々が楽しめる店作りを展開する
代官山 蔦屋書店からリポートをお届けして、
今年のゴールデンウィーク、あなたはきっと読書に夢中!



芥川賞 選考のウラ側
 
今年(2012年)1月
『共喰い』で第146回 芥川賞を受賞した田中慎弥さん、
昨年(2011年)の受賞作『苦役列車』の映画化が決まった
西村賢太さんの言動や、
石原慎太郎さんと黒井千次さんが選考委員を退任したことが
話題となった芥川賞
 
島田雅彦さんは過去6度 受賞候補となり
現在は選考委員を担当。
 
  受賞作品決定に至るプロセスや
  選考作業の方法などを伺いました。
 
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Q.選考委員は何冊読むのか?
 
   ⇒ 候補作の5~6冊
 
 選考委員が読む作品は
 最終選考に残った5~6作品。
 芥川賞の場合
 100ページ前後~長くて250ページが多い。
 
  「直木賞」は単行本として出版された作品が対象のため
  上下2巻のケースも珍しくありません。

 
島田 「でも(芥川賞も直木賞も)選考料は同じ」
 
Q.島田雅彦さんの読み方は?
 
   ⇒ 2回読む
 
 最初は“流して”読み作品の“タイプ”を把握。
 次に、一行一行、チェックをしながら読むそうです。
  
島田 「どこを褒めようか、どこをけなそうか
     っていう形で各論に入って
     2回は読みます」

 
Q.票が割れた場合はどうする?
 
   ⇒ 投票→討議→投票 を繰り返す
 
 1回目の投票後、
 票数の少ない作品から討議に入り
 落選を確認。絞り込みを図ります。
 
島田 「たいてい第1回の投票で
     過半数を超えるものはでないんです」

 
 票数の少ない作品を強力に推す委員は
 推薦理由を説明することができ
 そこで、ユニークな着眼点、
 説得力のある批評があれば
 第2回以降の投票で
 “票を動かす”こともあるのだそうです。
 
島田 「多分にゲーム的です」
 
弘兼 「好みによって採点する、難しい作業ですね」
 
島田 「“好み”に合わせて評価する――
     ということでいえば、
     自分の好みに合ったものを
     選べばいいわけなんですが、
     反対していた他人に説得して
     をつけさせるためには
     熱弁をふるわなければ
     いけないところがあります」

 
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  ◆熱弁をふるうと逆効果??◆
 
 漫画賞やCMコピーなどの賞で
 数多く選考委員を務めたことがある弘兼さんと
 島田さんの共通する体験が明らかになりました。
 
  熱弁をふるうと
  “正論”を嫌う委員によって
  外されてしまう――。
 
島田 「正論を嫌うんですよ」
 
弘兼 「正論を言うと
     “軽く見られるんじゃないか”
     っていう感じがして、
     あえて曲解するんですよね」
 


執筆開始後、結末までは“臨機応変”に
 
小説を書き出した時
すでに“結末”は決まっているのでしょうか?

 
 はじめに、おおまかな起承転結――
 作品全体の“設計図”を作る。
 
島田 「作業工程の中では随時変わっていくので
     臨機応変に進めていくわけです。
     それで、最初に想定した“結末”に着地したら
     多分それは失敗です」

 
 想定通りに結末を迎えた作品は
 当初の構想から執筆を進める中で
 “発展”がなかった――、
 自分(島田さん)にとっての
 “新たな発見”もなかった――といえる。
 
弘兼 「登場人物のセリフが、
     自分でも意外なくらい
     “いい言葉”だったりしたら
     これに対応してストーリーも変わりますか?」

 
島田 「そういうことはよくあります」
 
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弘兼憲史流 漫画の描き方は 途中 が変わる
 
 作品の導入部分と、ラストは
 構想から変わらないものの
 「途中は変わります」
 
島田雅彦流 小説の書き方は リズム・テンポに変化
 
 同じテンポで物語が展開すると
 読み手が飽きる――という島田さん。
 
 「ここをテンポアップしよう」
 「ここをスローに、
 ジックリとなめるように描写していこう」

 というように、リズムに変化をつけます。
 
島田 「リズムとかテンポとか、
     可変的にやっていった方が
     読むほうもノッてくれるのではないか、と
     思いますね」



島田雅彦さんの最新刊のお知らせ
 
『英雄はそこにいる』

■5月2日発売(集英社/税込み1,680円)
 
島田 「“英雄の中の英雄”ヘラクレス
     現代の日本に、リアリティを持って置き換えてみる
     ――という発想から始まったんです」

 
次々と暗殺、テロを重ね
全てが迷宮入り事件になってしまうカリスマ天才暗殺者

  VS
シャーマンの子に生まれた
“ナルコレプシー”の探偵ナルヒコ

 
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島田 「エンターテインメントに尽くしました」
 
弘兼 「映画化になりそうな話ですね」
 
島田 「ぜひ希望しております。
     あと『本屋大賞』も欲しいな」

 
石川 「映像化されたときには、島田さん自ら
     ご出演いただきたいな、と思いますよね」

 
 島田雅彦さんの最新情報は
 島田雅彦公式ホームページ 彼岸百貨店でご確認ください。



お送りした曲目
 
二つのギター / キングス・ロード
 (弘兼セレクション)
黒い瞳 / 101ストリングス・オーケストラ
 (弘兼セレクション)
弦楽四重奏曲第13番変ロ長調 第13番変ロ長調 / ジュリアード弦楽四重奏団
 (島田雅彦さんのリクエスト)
ラブ・ミー・トゥナイト / トム・ジョーンズ
 (RN・KEIJI KEIさんが初めて買ったレコード)
sign / JUJU


島田雅彦さんの名言・好きな言葉(PC版)はこちらをご覧ください。
 
過去の放送レポート バックナンバー(PC版)はこちら

2012年04月21日