アナ歴40年!邦丸が様々な エピソードを語る連載企画㉘猛吹雪の宗谷岬、反対を押し切って取材に臨んだけれど…。

アナ歴40年!邦丸が様々な エピソードを語る連載企画㉘猛吹雪の宗谷岬、反対を押し切って取材に臨んだけれど…。

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【野村邦丸 ワタシの履歴書 ~アナウンサー歴40年記念特別連載企画~】

『第28回 命知らずの運転手さんと真冬の宗谷岬へ』

「野村邦丸の気分はZUNZUN!」買い出し隊では、
ずいぶんいろんな所にお邪魔しました。

スタッフに一人、地方が大好きなディレクターいて
「今度は〇〇へ行きましょう」といろいろなアイディアを出してくるのですが、
ある時、その男が「真冬の稚内に行きましょうよ。絶対面白いですから」と言うんです。

「真冬の最北端、宗谷岬ですよ。絶対いい音が録れますから!」
何のことはない、自分が行きたいだけなんですが…。

私も、もしかしたら面白いかもな、と思ったのが運の尽き。
そのディレクターと、細身の作家と3人、真冬の稚内へと飛ぶことになりました。

ところが、空港に着いたのはいいけれど、風は強い、雪は激しい…。
次の日には帰りの飛行機に乗らなきゃいけなかったので、
とりあえず航空会社のカウンターに行って
「明日、飛びますよね?」と聞いたら
「まず無理だと思います」。

ウッソー! とディレクター、びっくり仰天してますが、
我々が乗ってきた飛行機がもう飛ぶことができなくなって、
その後はすべて欠航ということで。

とはいえ、もう来てしまったものは仕方がありません。
とりあえず宿に向かって、計画通り宗谷岬に行ってみようと
いうことになったんですね。

とりあえず宿に落ち着いてタクシーを呼んでください、とお願いしました。

「なんで? どこに行くのこの吹雪の中?」
「取材なんです。真冬の宗谷岬で録音を」
「悪いことはいわない。やめておきなさい。運転手さんだって嫌がりますよ」

それでも、一応タクシー会社に聞いてみてもらえますか、
とお願いしたら、いたんですね、チャレンジャーな運転手さんが。

宿で貸してもらった防寒着に身を固めて、車に乗り込むなり、運転手さんは、
「宗谷岬、ホントに行くんかい。何も見えねえよ」
「いや、何も見えないのがいいんですよ」
と、ディレクターが平然と一言。
「ビュービューって、音が欲しいんですよ」

本当に勇気のある運転手さんでした。
いくら慣れてる道とはいえ、凄まじい風雨で、ほとんど視界ゼロ。

なんとか宗谷岬にたどり着いて、予想通り!
の素敵な音が録れました。

口を開ければ、すかさず中に吹雪が飛び込んでくる。
もう喋るのもやっと、とう感じで、寒いを通り越して、痛い。

文字通り、命からがら、宿に逃げ帰ってきました。
ところが、ここでもう一つの難関が待っていたのです。

夜は地元の有名なお寿司屋さんに行こうという計画だったので、
宿は素泊まり。

もし外に食事に出なければ、カップ麺でもすすって寝るしかないという状況で。
「お寿司屋さん行っても、この天気だから水揚げもないだろうし、
あまり期待できないと思いますよ」と宿の方。

でも、ここでお寿司を食べないことには、取材が成り立ちません。
命がけで宗谷岬に立った意味がなくなってしまいます。

「行きます」
我々は決死の覚悟で外に出ました。
普通なら、宿からお寿司屋さんまで歩いて5分。

「でもこの天気だから…5分じゃ無理だと思いますよ」
そして我々の「八甲田山」が始まったのでした…

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野村邦丸:1957年1月17日生まれ。川崎生まれ、日大明誠高校・日大法学部新聞学科を経て1981年茨城放送入社、
フリーを経て1991年文化放送入社。2017年定年退職、再びフリーとなる。
「くにまるジャパン極」パーソナリティ。
家族・高校野球・シカゴ(ロックバンド)、そして酒と肴をこよなく愛する。
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【野村邦丸 ワタシの履歴書~アナウンサー歴40年記念特別連載企画~】

『第1回 必修単位を落としてもアナウンサーになれる!?』

『第2回 局の玄関にコタツ、トン汁食べながら生放送で県警から大目玉』

『第3回「完璧にパクった」NHK松平アナに仁義を切った話』

『第4回 主夫として生きるつもりが「いつまでそんなことやってんだ!」と一喝されて…』

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