林家正蔵のサンデーユニバーシティ

文化放送

毎週日曜日7:30~8:00

11/14(日) <在宅介護>と薬剤師さんの仕事

ガッシリした体格の井上裕(いのうえゆたか)先生は、
身長185cm。とっても背が高い。

スタジオに入ってイスに座ると、
「ふふ~ん」とうなづきながら、興味深げにスタジオを眺め回し
「初めて入った」というスタジオに大変興味を示されました。

好奇心旺盛なお茶目な感じの先生です。

inoue2.jpg 

井上先生は、以前、千葉県のオヘソにあたる大多喜という町の
病院で、薬剤師さんとしてお勤めでした。

先生のお話によりますと、大多喜のような地方の病院は
患者さんとのおつき合いが親密で、
患者さんが大多喜特産の「竹の子」を病院に持ってきて
くれたりするんだそうです。

また、看護士さんなど医療スタッフが患者さんのご近所
だったりして患者さんのことをよく知っているので、
今、患者のおばあちゃんが家を出ました、と聞けば
「あぁ、何分で病院に着くな。」といった細かいところまで
把握できるといいます。

その大多喜の病院の院長先生のモットーは、

『患者さんへのサービスが全て』 というものだったので

病院全体で患者の情報を把握してケアしようと、
医師・看護士・薬剤師など医療スタッフが
"みんなで患者をみる"体制が整っていたそうです。

たとえば、大多喜では、入院していた患者さんが退院すると
「在宅介護」を希望するケースが増えていて、
入院中に親しくなった薬剤師さんに服薬指導をしてほしいという
患者さんもいるので、医師・看護士・薬剤師さんがチームを
組んで患者さんの家を回っていたといいます。


井上先生が薬剤師さんとして体験した「在宅介護」のケース。

看護士さんと一緒に薬の説明と血圧を測るために患者さんの家を
訪れたときのこと。

その80代後半の患者さんが入院していたとき、膝が痛い、と
言うので渡した膝の「痛み止め」の薬があって、
家に戻った患者さんが長いこと布団の中で過ごすようになって
背中が痛くなったので、それを背中に塗ったところ
かえって、染みて痛くなった!と、言われたとき。

(井上先生が背中を見て、痛いのは「床ずれ」が原因とわかった
 そうなんですが)

薬の使い方の説明って、むずかしいなと思ったとそうです。

膝の「痛み止め」はスースーするので「床ずれ」に塗ると
染みてかえって良くない。
なのに患者さんは、「痛み止め」として同じ効き目があると
思って塗っていた。

そのへんの薬の使い方の細かな説明も、実際患者さんに接して
みて気づかされたとおっしゃいます。

このケースでは、
井上先生がその場で担当の医師に電話して事情を説明し
夕方、医師が患者さんをみに来て、薬を処方した、ということです。


このお話を聞いて、1人の患者さんに対して
なんて手厚い介護なのだろう!と、かえって感心しました。

こんなきめ細かい介護、看護を受けられるなら、「在宅介護」も
安心です。
都会のお年寄りには、とてもこんな介護は受けられない、と思って

「大多喜の医療は、理想的ですネ!」と井上先生に言うと、

先生は、

『いえ、医師不足、という現実があり、
 地方の病院の医者は 懸命に頑張っている。
 医師以外のスタッフもみんな頑張っている。』

『逆に、患者さんが重症のときは対応しきれないので
 県立の大きな病院にご紹介するといった連携を常にとっておく
 ことも大事で、ドクターはジレンマを抱えていると思う。』

というお答えでした。

これは、深刻な現実ですね。

きめ細かい心の通った暖かな"介護"と
重症患者にも対応できる"高度な医療"と、
両方兼ね備えた病院があったらいいのに_____。

"お金"と"人"と両方必要ですネ。


それにしても、今まで、
薬剤師さんは薬局の窓口に座っているもの、というイメージが
強かったのですが、今日の井上先生のお話で、
薬剤師さんが「在宅介護」で患者さんの家を回るなど、
思ったより患者さんに近い存在で、これからの高齢社会の中では、
薬剤師さんの果たす役割はますます大きく重要なものになるんだ
とあらためて教えていただきました。


 


番組日記 | 2010年11月14日 08:00

≪ 11/7(日) <人間の面白さ>に迫る | 番組日記 一覧 | 11/21(日) 目からウロコ! ≫

Copyright © Nippon Cultural Broadcasting Inc.All right reserved.