林家正蔵のサンデーユニバーシティ

文化放送

毎週日曜日7:30~8:00

1/30(日) <コミックジャーナリズム>

飯倉先生のご本「日露戦争諷刺画大全」(上下巻)は、
諷刺画を通して「日露戦争」を見直すことが大きなテーマに
なっています。
掲載されている諷刺画は658点。
先生が図書館に通って世界各国102の新聞・雑誌のページを
片っ端から1枚1枚めくって、20年の歳月をかけて
探し集めたもので、とてもユニークな本です。

これだけ諷刺画を集めるのはさぞ大変だったろうと思うのですが、

『集めるより、分析する方に時間がかかる。
 解説(キャプション)があっても意味の分からないものが多く
 絵の意味を読み解く方が大変だった。』 ということです。

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飯倉先生は授業に諷刺画を取り入れている他、
テレビのドキュメンタリー番組や、映画・ドラマなどを
5分くらいにコンパクトにまとめたものを学生に見せて
問いかけるスタイルの授業を行なっています。

そして、最近ではなんと「マンガ」も授業に取り入れている
と聞いて驚きました。

"マンガ"といっても、最近ではドキュメンタリー的マンガ
_____「コミックジャーナリズム」という分野があって、
戦地などで実際体験したことをカメラで撮るのではなく
マンガにして表現する「コミックジャーナリスト」がいて、
そういう「コミックジャーナリスト」の描いた作品を
学生たちに読ませているんだそうです。

先生のお話では、日本にも昔からドキュメンタリー的マンガは
あったそうで、その代表格は【はだしのゲン】

この作品は、コミックジャーナリズムとまでは言えないけれど
ドキュメンタリーであり、
実写映像ではなくマンガで描かれていることで、かなり感情移入が
できる、とのことで_____確かに、これは世界中のあらゆる
年齢層の人々に読んでもらいたい、いい作品です。

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先生がスタジオに持ってきて下さった「コミックジャーナリズム」
の代表的作品が、他に2冊。

1つは、迫害されるユダヤ人を描いた【マウス】
もう1つは、逆にユダヤ人に迫害されるパレスチナ人の視点に
立って描かれた【パレスチナ】

【マウス】は、アウシュビッツの強制収容所に送られた経験を持つ
父親から聞いた話を、作者のアート・シュピーゲルマンが描いた
もので、タイトルの「マウス」はユダヤ人を表わしています。

ちょうど【マウス】の本を手元で広げていた正蔵さんに、先生が、

『マウスがユダヤ人なら、ナチスは何ですか?』

正蔵さん:「ネコ!」

『ご明察です。スルドイですね。』

正蔵さん:(本を見ながら)「イェ、ちゃんと描いてある。」


何だか微笑ましいやりとりだなぁと思っていると、
本のページをめくっていた正蔵さんの手が止まり、
「ホラ!」と広げて見せてくれた絵______


≪ねずみが数匹、天井から縄で吊り下げられ
 首を吊って死んでいる絵≫


正蔵さん:
「生々しさというよりは、ジワー~ッとくるインパクトがある」と
鋭い感想。

私ものぞいてみると_____

シ~ンと静けさが漂う絵だけど、見ると恐ろしくなる。
これが実写映像だったら目を背けてしまう。マンガだからこそ
逃げずにじっと見ることができて、戦争の恐ろしさも真正面から
捉えることができる_____

これこそがマンガの効用なのだと思いました。

飯倉先生は、
【マウス】を読めばユダヤ人に同情するけど、
一方で【パレスチナ】で行なわれていることも知ってもらいたい。
学生には、偏った見方をしないように、
いろんな見方があるんだよ!と常にバランスをとって教えるように
心がけている、とお話下さいました。


≪一方的見方をしない≫
これが「国際政治」がご専門の飯倉先生が学生に一番伝えたいこと
なのだなと、改めて思いました。

2週にわたり、面白い授業に実際参加したような気がしました。
先生、ありがとうございました。


【今日の一曲】

Whatcha Gonna Do For Me /アベレージ・ホワイト・バンド 


 


番組日記 | 2011年1月30日 08:00

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